2023/04コラム

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【首里織の魅力】

久しぶりに会う友人に「どうして首里織を始めたの?」と聞かれることが多いです。
学生時代はハンドボールに明け暮れていた私が、織物をするなんて誰も想像がつかなかったと思います。


◆首里花織(やしらみ花織)

20年程サラリーマンとして企業に勤めていましたが
・このまま定年まで、勤め上げられるか
・好きな事が仕事にできたらいいな
・できれば一生続けられる仕事をしたい
と漠然と考えていました。

そんな中、生まれ育った首里についてネットで調べていましたら、故ルバース・ミヤヒラ・吟子先生の作品が目に飛び込んできました。ずっとタペストリーだと思っていた作品を改めて見てみると、なんと首里花織の名古屋帯でした。(それくらい織物について無知でした)
ルバース・ミヤヒラ・吟子先生の作品は、私にとって衝撃的だったと言いますか、織物に対するイメージを完全に覆すものでした。
「織物でこんなことができるんだ!」「なんか新鮮でかっこいい!」「私も織ってみたい!」と純粋に思いました。
その後、運良く後継者育成事業に参加することができまして現在にいたります。

首里織を織り始めて4年ほど経ちますが【首里織の魅力】について改めて考えてみました。
当初は「織物でこんなことが表現できるなんてすごい!」とただただ思っていましたが、実際に首里織に従事してみると、また違った魅力に気づくことができます。


◆首里道屯織

まず、琉球王朝時代に王家のために織られていた高級織物であったことです。NHKのBS時代劇「テンペスト」で王様が来ていた着物が「首里道屯織」だと気づいた時は、私たちが日頃織っている織物を王族の方々は、こんな風に着こなしていたのかもとイメージができました。
そこから琉球王朝時代について興味を持ち、少しずつ勉強するようになりました。貿易や政治的なことが、織物の技法や現在の私たちに影響を与えていると思うと非常に興味深いです。

そして織り手として。首里織には様々な技法(花織・絽織・絣など)があり、一つずつ極めることも重要だと考えますが、複数の技法を組み合わせて作品を制作したり、首里織最高峰の織物と言われる「花倉織」に挑戦するという目標を持ち、ステップアップしていけるのも、私にとって魅力の一つです。


◆首里花倉織

長く経験を積まれた先輩方も「首里織の魅力は奥が深く一言では言い表せない」とおっしゃいます。
・もっと勉強したい気持ちを起こさせる不思議な魅力がある
・織の歴史は人の歴史。何百年も前に考えられたデザインが今も受け継がれていたり、また新たなデザインを作り出すことも可能
・全ての技法を制覇したい
・機に向かいながら、常に新しいデザインが心から湧き上がる。心が常に新しいものへと向けられていく


◇首里絣(縞の中・アヤヌナーカー)

他にも、もっともっとお伝えしたい魅力がたくさんあります。このように考えると、私はまだまだ首里織に対して満足感や達成感を得ることはなく、一生携わっていける、とてつもなく魅力的なお仕事に出会えたのではないかと感じます。

今回は織り手目線での【首里織の魅力】について、ご紹介させていただきました。
ぜひ皆さまにも、違った角度から首里織の魅力を感じていただけたら幸いです。

(文:具志堅 奈美乃)

2023年04月28日