2023/05コラム

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【織りの散歩道】

「沖縄伝統本場首里織物保存会」編集・発行の「織りの散歩道」という書籍があります。
人間国宝の宮平初子さんの幼少の頃のお話に基づいて刊行されたもので、首里織の歴史的背景や手わざの伝承など戦前の首里の様子も伺える貴重な書物でもあります。

首里染織館suikaraがある首里当蔵町。当時は城下町で御殿(ウドゥン)、殿内(トゥンチ)があり、そこの婦女子によって製作された織物が首里の織物です。
※御殿(ウドゥン):琉球王族の邸宅、そこに住む人。
※殿内(トゥンチ):琉球士族のうち、総地頭職にある親方家を指す尊称。大名方とも呼ばれました。

中でも興味深かったのは、[衣生活]と[宝物の蚕]のお話でした。

[衣生活]
当時は、親戚の出産時のお祝いには呉服屋さんで着物を買うこともできましたが、心を込めて織った反物がお祝いには喜ばれたそうです。生まれてくる前から楽しみに準備している様子が素敵だと思いませんか?

また、御殿・殿内には厳格な格付けがあり、着用するものには厳密な差別化が図られていたこと。小さな御祝の席には七色の縞が入った手縞、法事や葬儀には藍を主とした地味な手縞やヤシラミ花織を着用するなど、お祝いの規模や種類ごとに決められていたそうです。

そして、首里の織物は御殿・殿内の女性によって織り継がれた門外不出のものであり、現在まで織り継がれてきた華麗で洗練された織物は、一地域に伝承された技法の多様性において他に類例をみないと言われています。家族のためにより良いものを作りたいという気持ちから様々な柄・紋様・色目が生まれてきたのではないかと思います。

[宝物の蚕]
戦前、首里高校の近くに養蚕所があったそうです。
当時、首里のお年寄りは繭を炊いて真綿を作ったり、真綿や木綿糸から糸を紡いで織物用や縫物用の糸作りをしたり、布団なども自分の家で作っていたそうです。養蚕と言えば、群馬県というイメージでしたが首里にも養蚕所があったとは驚きでした。

現在、首里織組合では群馬県の養蚕農家さんから「純国産 ぐんま200」の絹糸を購入していますが、お蚕さんを育てるお仕事もたくさんの時間と手がかかる大変な作業だと思います。そのような状況で立派な繭を作っていただき、本当にありがたいです。

[最後に]
「織りの散歩道」は、おじいちゃん子であった宮平初子先生が城下の御殿・殿内散策をする風景がたくさん描かれています。紹介されていた「中城御殿」や「アダニガー」などを琉球王国時代の ” 首里の情景 ” を思い浮かべながら、私も散策して楽しんでします。
皆さんも、首里染織館suikaraに遊びに来ながら古都首里の町を散策されてみてはいかがでしょうか?那覇市観光協会さん主催の、地元ガイドと一緒に「那覇まちま~い」ツアーに参加されても面白いかと思います。

私は首里という地域で織り継がれた首里の織物に携われることを誇りに思い、従事して行きたいと思います。

(文:具志堅 奈美乃)

2023年05月31日