2023/06コラム

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【首里花倉織】
〜まるでトンボの羽のように透き通り軽くて美しいと歌われた織物〜

沖縄の織物の中で最も格式高い織物が「首里花倉織」です。

中国から浮織と絽織の技術を導入し、後にこの二つの技法を組み合わせて沖縄の気候に合った新たな織物を創り出したのが「首里花倉織」とされています。

琉球王府時代は位階制度があり、「首里花倉織」は王家専用衣装であったため数多くは作られず、また、庶民の目には触れることも少なかったそうです。さらに、現存するものは日本民芸館に一点とベルリン博物館に収蔵されている二点にすぎなかったため「幻の織物」とも称されていました。
その技術は尚家ゆかりの人々に伝えられ、滅びることなく受け継がれてきました。

昭和11年 宮平初子氏が花倉織の技術を習得
昭和49年 「首里の織物保存会」により沖縄県指定無形文化財に認定
昭和58年 那覇伝統織物事業協同組合により通産大臣指定全国伝統的工芸品に認定

このように、幻の織物と称されて消滅しかけたかのようにみえた花倉織も、現在では若い織り手も増えて着尺の他に帯なども盛んに織られるようになっています。

私にとって「首里花倉織」は、首里織の織り手として高い技術の習得と長年の経験を経てやっと織ることが許される織物という認識です。
以前、祝嶺恭子先生の講習会に参加した際、首里花倉織の定義について熱心に質問された方がいらっしゃいました。質問と同時に緊張感が走った会場では、祝嶺先生が慎重に言葉を選ばれて回答されていました。それほどまでに「首里花倉織」は首里織の織り手にとって重要で大切な織物なのだと、組合員になりたての私も感じたものでした。

琉球王府時代から現在に至るまで、首里織の織り手や着物ファンの心を掴んで離さない「首里花倉織」。数年後には私も「首里花倉織」の織り手となれるよう、日々技術を磨いていきます。

1月から職人コラムを担当して参りましたが、来月から新たな首里織職人にバトンタッチいたします。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

2023年07月01日