2023/09コラム

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季節が移り変わり、少しずつ秋めいてまいりました。沖縄では、これから工芸関連の展示会やイベントが増えてくる時期です。皆様は工芸品を購入する際、商品に貼付された小さな紙をご覧になったことがありますか?これらは証紙と呼ばれ、私たち職人にとっては伝統、そして品質への誇りであり、お客様に安心してご購入いただくため取り組んでいる事業です。今回のコラムでは、首里織組合の商品で主に貼付される証紙について、簡単に解説したいと思います。

証紙の種類
首里織組合では納品前に、必ず県営の織物検査を実施しています。そして、検査に合格した商品のみ品質の証として各証紙が貼り付けられます。


○沖縄県織物検査済之証
・この証紙は、県営の織物検査に合格した際に貼付されます。
・検査は、条例により沖縄県知事から委嘱された検査員によって実施され、沖縄県織物検査規格に基づき行われます。検査項目は組成、品位、染色堅牢度などが含まれます。


○伝統工芸品之証(沖縄県)
・沖縄県工芸品以外の類似品と区別し、沖縄の伝統工芸品を見分けるために貼付されます。


○伝統証紙
・この証紙は、「伝統的工芸品」に貼付されます。伝統的工芸品は、主に日常生活で使用され、主要部分が手作りであり、伝統的技術や技法、原材料、特定の産地を持つものです。伝産法に基づく経済産業大臣の指定を受けた工芸品がこれに該当します。
・2023年9月現在、240品目が指定されており、首里織もその中に含まれています。伝統証紙はこの「伝統的工芸品」の証であり、受け継がれてきた手わざを守る大切な表示です。


○組合証紙
・組合は2006年に地域ブランド「首里織」の商標権を取得しました。こちらの証紙では、地域団体商標登録番号なども表記されています。また、着尺や帯地の際は使用している染料や素材なども表記しておりますので、展示会などでご覧になった際はぜひチェックしてみてください。


○純国産絹マーク
・首里織組合では国産絹を積極的に使用しています。このマークは国産絹を使用し、製作された商品(帯・着尺・全織かりゆしウェア・ショール等)に貼付されます。

伝統・品質を守る証紙
一職人としては、納品前の織物検査はとても緊張します。自分では気づけなかったミスを指摘されたり、修正が必要になったり、不合格も珍しいことではありません。ですが、この検査を通して品質が維持され、つまずいた点も先輩方からアドバイスをいただくなど、全体的な技術の向上にもつながっていると感じます。織物検査と伝産品表示は今後も欠かすことのできない制度です。
これから首里織の商品をご覧になった際は、ぜひ証紙にも注目していただきたいなと思います。証紙は私たちの誇りと、伝統と品質を象徴する大切な証なのです。

(文・佐久原 祥)

参考文献

・那覇伝統織物事業協同組合.『首里織の歴史と技法』.1986年(改訂2005年)
・那覇伝統織物事業協同組合パンフレット.2016年
・一般財団法人 伝統的工芸品産業振興協会.「伝統的工芸品のシンボルマークについて」
https://kyokai.kougeihin.jp (2023.09.20)
・一般財団法人大日本蚕糸会 ジャパンシルクセンター.「純国産絹マーク」
https://www.silk-center.or.jp/junkokusan.html (2023.09.20)

2023年09月30日