○琉装を知っていますか?
首里染織館suikaraでは12月23日から「那覇の手しごと展」を開催していますが、1月には特別体験プログラムとして琉装で琉球文化に触れる企画なども用意しているそうです。首里織や紅型の反物から仕立てたドゥジンを身にまとって、首里の町を少し歩いてみたり、三線を学んでみたり、とても楽しそうな内容です。
琉装は、琉球王朝時代から伝わる伝統的な衣装です。現代でも成人式や結婚式などお祝いの席で着用されますが、最近では着物のように普段から好んで着用される方もお見掛けします。琉装のことを沖縄では「ウチナースガイ(スガイ=装い)」といいます。でも、個人的にはなかなか着る機会も少なく、知らないことばかり。おさらいもかねて、今回は琉装について調べてみることにしました。
○琉装の特徴
最も特徴的な点は襟と袖の形態にあるそうです。
・衽下がりが短く、襟は掛襟がない
・襟下に25cmほどの長い返襟があり、袷の場合は見頃と異なる色が使われる
・袖は男女ともに袖口が開いた広袖
・脇下に「脇スビ」と呼ばれる裂が縫い込まれており、身八つ口がない
・元服前の男性の晴れ着は袖丈が長く「長袖御美衣」と呼ばれる
○男性の礼装
・ドゥジン、袴の上に小袖、さらに表衣をまとう
・大帯を前結び、冠、白い長筒の足袋
ドゥジン(胴衣)
・上半身用の襯衣(肌着)
・脇下は全部縫い閉じず、裾にかけて一尺あまり開けてある。「ハサ」と呼ばれる。
・色は白、水色、黄色など基本的に一色で染められている。
袴
・下半身用の襯衣(肌着)
・マチのある二股の広い長筒
・腰回りに小ひだを寄せ、右腰部に結び紐がある
大帯(ウフウービ)
・幅広の帯で、上級士族は錦金襴の大帯を締める
・長さ一丈四尺五分(約4.2m)、幅五寸七分(約17cm)
・長さが半分の大帯もあった?
冠
・ハチマチ(八巻)とも呼ばれる
・王、世継ぎである世子、王子、按司、三司官の勲功あるものに対し与えられた
・それぞれ地色が赤、黄、紫、青、黒の五彩で浮き織されており、階級によって分けられていた
○女性の礼装
・ドゥジン、カカン、または小袖の上に表衣をまとう
・帯は締めず、着物を腰に挟み込むウシンチーという着装
ドゥジン(胴衣)
・ノロ(神女)や女官が着用するほか、士族の女性は表衣とあわせて着用
・衽やハサにひだが寄せられているものもあり、細かくなるほど身分が高い
・一色ものの白胴衣、赤胴衣、黄胴衣と、サヤ胴衣と呼ばれるびんがたのドゥジン、唐錦の袷ドゥジンなどがある。
カカン(下裳・下裙)
・ドゥジンの下につける長い巻きスカートで、細かいひだが寄せられている
・白カカン、黄カカン(王女以上の者)、黒いカカン(結婚式用)などがある
・絹や木綿、芭蕉布などで仕立てられる
表衣
・夏に着る単衣はタナシ(帷子・田無)と呼ばれ、特に王族が着用するものをンチャナシ(美帷子・御田無)と呼んだ
・冬は綿衣(ワタジン)と呼ばれる絹や木綿で織られた袷を羽織った。王家は真綿で作られた綿御衣(ワタンス)を着る。
○まとめ
琉装について調べると書籍によっても記述のブレなどあり、まだまだ研究されている分野なのかもしれません。ウシンチーという着方や広い袖口は衣服の間に隙間ができ、風が通る涼しい着方なのだそうです。沖縄の気候にあった装いで、それでいて美しく、ゆったりとした着装に琉球の美意識を感じました。今後は琉球王朝時代の衣装を見るとき、どのような着用の仕方がされ、どのように柄や文様が見えていたのか、そういったところまで想像して見てみようと思います。
ちなみに「那覇の手しごと展」は2024年1月31日までの開催です。琉装体験につきましては日時や条件など決まっていますので、ご興味のある方はぜひsuikaraへご確認の上、ご予約いただけると幸いです。
また、こちらの月1で更新していた職人コラムですが、今回をもってしばらくお休みさせていただくこととなりました。再開については組合SNSでお知らせいたします。よろしくお願いいたします。
文・写真 佐久原祥
参考文献
・那覇伝統織物事業協同組合.『首里織の歴史と技法』.1986年(改訂2005年)
・「織の海道」実行委員会.『織の海道-沖縄本島・久米島編』.2004年
・東京国立博物館ほか編『沖縄復帰50年記念特別展 琉球』.2022