2022/6月コラム

-----

 

~夏川を越す 嬉しさよ 手に草履~
 ― 夏の小川を渡るため 草履を手に 川に入り 
                        浸した水が心地よく幼い頃の川遊びを思い出し 
                                                                        思わず嬉しくなってくる ―


小さい頃、祖父母は国際通り近くで小さいマチヤグゥワー(商店)を営んでいました。
近くには銭湯や食堂、骨董品屋があり、よく一緒に配達に行きました。
食料品や日用品、惣菜等を販売しており、商品はひな壇作りの棚にキレイに陳列され、
その傍ら、大きな籠に沢山のもやしを広げ、もやしの髭とりをしながら祖母はいつも
店番をしていました。
今では、卵はスーパーでパック売りですが、祖母の店では一個一個量り売り、
一箱三個入りのアメリカ製のマーガリンも、バラ売りしていました。
お金の計算は年季の入った、五玉の大きなそろばん。
店で使う、商品を入れる紙袋もチラシで手作り。
袋に使う糊も、鍋で溶かしたスターチかごはんから作った糊を使っていました。


もやしの髭とりも、紙袋作りも、一緒に手伝いとても楽しかったです。
祖母の手は手袋みたいで、厚くてまんまるで、働き者の手でした。


祖父は、明け方自転車で、農連市場まで野菜や果物の買い付けに行きました。
たまに早起きしてお供することがありましたが、祖父から
「明け方の国際通りにはよく小銭が落ちている。」と聞いていたので、
いつも下ばかり見て歩き、よく注意されていました。


買い物も、今では大型スーパーに車で乗りつけて買い物できますが、
あの頃は歩いて公設市場まで買い物に行きました。
盆、正月ともなると大量の荷物です。子供の私達もかりだされ荷物持ち。
荷物は重く、きつくて嫌だったのですが、当時公設市場内に、レモネードと
インスタントコーヒーを売っているパーラーがあり、お手伝いのご褒美として
買ってもらえるレモネードがとても楽しみでよく憶えています。


祖父母も亡くなり、マチヤグゥワー(商店)を営んでいたあたりはモノレールが通り、
高層マンションが建つ等、当時の風景とは様変わり。
生活は何十倍も便利になり、効率的になりましたが、今でもあの頃を思い出すと心地よく、
暖かい気持ちになります。

昔は「衣食住」等、いろいろな事に、人の手間と時間がかけられていたように思います。
時間をかけて、手間をかけて、祖母と一緒に行う作業は、今でも忘れられない時間です。


近頃、利便性や時短重視になった自身の生活を思い返し、
改めて、「丁寧に暮らす」という意味を考えてみようと思います。


12月から担当させていただきました月一コラム。
来月から新たな首里織職人にバトンタッチいたします。
これからも、宜しくお願いいたします。


 文章:上地ゆき枝

 

 

 

2022年06月17日